君と乗り越えた時
「莉乃ちゃん、もう体調は大丈夫なの?」
「うん。4月から大学に戻ってくるよ。」
莉乃の話をしていると、追加のビールが運ばれてきて、受け取ると、航は早速ジョッキに口をつけ一口飲んだ。
「そっか。大変だな、耳が聞こえないって。」
「……あれ、耳のこと話したっけ?」
そんな航に続いてジョッキに口をつけようとした時に、話した覚えのないことを言われて、思わず航の顔を見る。
「言ってたよ、両耳聞こえなかったのが片耳は聞こえるようになってよかった、って。」
「そうだっけ。」
「忘れたのかよ、珍しく酔ってる?」
「いや、これくらいじゃ酔わないけど。」
まだ飲んだのビール一杯だし流石に酔ってはいないけど、まあ何かの流れで話したか、って深く考えることはやめた。