センセイ、ありがと。
「中学生以下のお客様はご利用いただけません。」






「そう、ですか。」






ここのカプセルホテルもダメだ。




もう3件目だ。





店を出た。




「ねえちゃん、川のとこで寝ようよ。あそこならきっと誰にも見られないよ。」






「……そうだね、そうしよっか。」





歩き始めた時だった。






「水無月?」









……センセイの声がした。








「ねえちゃん、だれ?」






「あ、あの、私の学校のセンセイ。数学の。」





そんなことを言ってる場合じゃない。


どうしよう。バレたら、お母さんのこと。





「水無月、大丈夫、か?」





ポロッと、涙が溢れた。





「え、あ、うん、だい、じょうぶ、センセ。」






センセイはこっちにやってきて袖で涙を拭ってくれた。




こんな時に優しくしないでと思いながらも安心してしまった。





「センセ、どうしよう。」





やめて、私の口。雪の前で、喋らないで。





「私」






や、めて






「僕とねえちゃんは、親に出て行けと言われました。」






ゆ、き?






「今、あそこで寝ようと思って向かっていたところです。」






冷静な目だった。



あれ?雪ってこんなに大人っぽかったっけ?






「そっか。名前、聞いていい?」





「はい。水無月、雪です。」





「雪、くんか。うん、わかった。とりあえず俺についてきてくれる?水無月は俺が手をかすから。」





「はい。」





私の口が動かなくなっている間に話が進んで、気づいたらセンセイに手を掴まれていた。





「ん、」といって、カイロを渡してきた。





「あ、りがとうございます。雪。これ、はい。」





「いい、ねえちゃんが持ってて。」





「だめ。持ってて。」




無理やりポケットに突っ込んでおいた。





「センセ。ごめんね。もう大丈夫だよ。」




手を離そうとしたけど、逆にそれを拒むようにギュッと握り返された。





「まだ手が冷たい。雪くん、君もこっちおいで。」




雪はん?という顔をしながらもセンセイの方へ近づいた。




センセイは余っていた左手で雪の手を掴んだ。






「落ち着くまで今日からうちが家だよ。」





あ、雪、多分泣いてる。



こんなに優しくされたの、いつぶりだろうね。雪。





「センセ、ありがと。」




「もっと元気だせ。」




「ありがとっ」





「ん、許す。」





「俺んち、姉貴がいるから、そこんとこよろしく。」





「あ、ありがとうございます。えっと、先生。」





「ん。俺の名前は佐久間圭って言うんだ。先生がいいならそれでいいけど、まあ好きに呼んで。あと、別に敬語じゃなくてもいいよ。今いくつ?」





「十二、だよ。圭さん、」





「そっか。小六か。しっかりしてるね。」





「ううん、そんなんじゃないよ。」





「あ、あれだよ。あのマンション。広めだから、二人分部屋あるよ。」




「あ、一部屋でいい。っていうか、一部屋がいい。」




「ははっ雪、私のこと好きなんだねぇ。」




あ、顔真っ赤になった。



かわいいなぁ。





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