私がアナタの運命です!-運命だから当然なのに、根拠を求められても困るんですがっ-
 罵倒される意味がわからずきょとんと首を傾げると、大きなため息を吐いたジルがソファにもたれながら項垂れてしまって。

 
「やんっ、天使だと思っていたけれど小悪魔なの!? えっちだわ」
「もう……黙ってくれ……」

 
“ハッ、もしかして体調が悪いのかしら”

 そんなジルの様子に状況を察した私は焦って部屋を飛び出しキッチンへ向かった。


 
「おや、シルヴィエお嬢様。そんなに慌ててどうし……」
「ジルの体調が悪いの! 少し場所を借りるわよ!」

 料理長に声をかけた私は慣れた手付きで林檎をすりおろす。
 すりおろした林檎に、同じくすりおろした生姜と蜂蜜をたっぷり混ぜた。


「今回も良い出来だわ!」

 
 まだジルが家に来たばかりの頃、精神的な不安からかジルが風邪を引いてしまったことがあった。

 体は辛いはずなのに眠れない様子の義弟の為に、昔メイドが作ってくれたものを思い出しながらこっそりキッチンから材料を持ち出して作ったのがこの特製すりおろし林檎。

“あの時は上手く作れなかったけれど”
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