心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない

1.出して欲しいのは表皮であって中身ではない

 昔から感情が表情に出ないタイプだった私は、15歳の時に両親に捨てられ、偶然居合わせたブラゴヴォリン伯爵夫妻に拾われた。

 まだ何も出来ない小娘の私に、たった7歳のご子息の遊び相手という仕事をくださったことは今思い出しても『危機管理って言葉をご存じでしょうか』と詰め寄りたくなるものの、怒っていても泣いていてもお可愛い坊っちゃんの専属メイドとして11年たった今も仕えれることはこの上なく幸せで。


 ――何も持たず笑えもしない私の手を握るあの小さな手の温もりを、私は一生忘れないでしょう。


 
「イメルダ、いるか!」
「お呼びでしょうか、お坊っちゃま」
「ちゃまはやめろと言ってるだろう!?」


 イメルダ、と私の名を呼ぶのはこのブラゴヴォリン伯爵家の一人息子であるルーペルトお坊っちゃまである。
  
「俺はこの間成人して18歳になったんだ、もう坊っちゃんは卒業しろ」
「存じております、お坊っちゃま」
「……くっ」
 
 ペコリと頭を下げると坊っちゃんは少しがくりと項垂れた。
  

“そんな姿もお可愛いこと”


 出会ったばかりの坊っちゃんは少し人見知り気味な7歳の少年だった。
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