心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 ちゃんと教えられるのかと不安になった私がそう言うと、私の腰に両腕でがっしり絡み付いた坊っちゃんが慌てだす。

 そんな余裕のない様子もお可愛いらしいが、やはりここは経験豊富な者が適切だろう。


「いいえ、坊っちゃんに恥をかかす未来は見過ごせません。他がダメならせめて私がどこかでチャチャッと経験を積んで」
「くるなくるな!俺と積もう、経験は俺と積もう!」

“確かに坊っちゃんのお相手ならばそれはもう女神のような清廉潔白なご令嬢に決まっておりますね”

 ならば変に経験豊富な相手より処女の私の方がいいのかも、と思い直した。
 はじめて同士で探りながら気持ちいいところを見つけるというのが一番正解かもしれない。


「理解いたしました。どうぞお好きなだけ私でお試しください」
「なんか違う……」

 再びしょぼんとしてしまうが、そんな捨てられた子犬のような姿はときめかせるだけ。

 相変わらずドギュルンギュルギュルバッキュンと心音がパレードしつつ、そんな内心が顔に出ないことに少しだけ感謝した。


「……ベッドに移動してもいいか?」

 少し戸惑いながらそう聞かれ、私は迷わず頷く。
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