心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 その頃から天使のように可愛らしかったのに、18歳になられた今もこんなにお可愛らしいだなんて!


 しかし専属メイドである私が主人たる坊っちゃんにニヤニヤする訳にはいかないと頬に力を入れる。
 長年の努力の賜物で、今ではこの鉄仮面がデフォルトだ。

“まぁ、元々表情筋が死んでいて気持ち悪いって捨てられたのだけど”


 私の表情から何も察せないことに困っているらしい坊っちゃん。
 

 元々からか努力の賜物かは別として、その鉄仮面のお陰で今もその戸惑う可愛らしい姿が見れるだなんて、私としてはご褒美でしかないのだが。


「お、俺も成人し大人の男になる時がきたと思うんだ」
「はい」

 その戸惑いを振り払うように、坊っちゃんの深緑の瞳が真っ直ぐに私を射貫く。

“その凛々しい表情も堪らなくお可愛らしいわ……!?凛々しさの中に少年らしさも残されるだなんてさすが私の坊っちゃんです!”

 今すぐそのアッシュグレーの髪を撫で回したい衝動に駆られるが、もちろんメイドである私にはそんな事許されない。

 私に出来るのはやはり口を固く閉じ表情を変えずに坊っちゃんの指示を待つだけ。

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