心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 掴まれたままの腕がとても不快で精一杯嫌な顔をしてみるが、残念ながら私の表情はこんな時も鉄仮面のままらしく威嚇にすらならないようだった。


「さっき面白い事が聞こえてなぁ」
「そうそう、閨教育……ってな」
 
 ニタニタと気持ち悪い笑いを浮かべながら男たちが私を囲む。

「メイドって大変だなぁ?そんな仕事もしてんのな」
「けど、ルーペルトが相手じゃ満足出来ないんじゃねぇ?」
「何しろあいつ遊びに誘ってやっても興味ないの一点張りで、女の悦ばせ方なんて知らねぇしな」

 クックと笑いながら紡がれる、最愛の坊っちゃんの名前にざわっと私の神経が逆撫でされる。

“坊っちゃんを呼び捨てにしているということは、どこかの貴族のご子息なのだろうですけど”

「そんなつまんねぇ堅物の相手をする前にちょっと俺たちと遊ぼうぜ?」
「そうそう!俺たちなら女の悦ばせ方も心得てっし」
「貴族に仕えて媚びるのがお前らの仕事だもんな、人形みたいに変わらないその表情が愉悦で歪むの見てぇって思ってたんだよ」

“下衆ですね”

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