心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 彼らの紡ぐ言葉があまりにも不愉快過ぎて、坊っちゃんの前ではいつも内心パレードを開催している私の心がスンッと冷えきり下衆という言葉しか出てこない。

 ブラゴブォリン伯爵家は伯爵家の中でもかなりお金持ちで力もそれなりにある家なので、おそらくどこにも媚びなくていい坊っちゃんを妬んだやっかみだろう。


「私は貴族に仕えているのではありません、私の主は坊っちゃんだけです」
「坊っちゃん!ルーペルト坊っちゃんかぁ、かぁわいいなぁっ」
「うは、その坊っちゃんに吸われたおっぱい、僕ちゃんたちも今から吸ってあげまちゅからねぇ~」

 私はともかくまるで坊っちゃんまでをも馬鹿にするようなその言い回しに、苛立ちと怒りで視界が揺れ腸が煮えくり返る。


「ほんっと、こんだけ言われても顔色一つ変えねぇのな」

 はぁ、とため息まで吐かれた私はそろそろ我慢の限界。
 こんな下衆を視界に入れている時間があるのなら、じゃがいもの芽の数を数える方が有意義で。

 
「離してくださらないと、私許しませ……」
「離せよ」
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