心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 けれどどこかその紳士にあるまじき対応を非難するような冷酷さを滲ませた坊っちゃんは、私の知っている可愛く幼い姿ではなく、もう立派な大人の男性だった。


「お、おい、何とか言ったらどうなんだよ!?」
「!」

 私が坊っちゃんの成長に心震わされていた時、そんな大人な坊っちゃんを見て焦りを感じたらしいその下衆が、大事な大事な坊っちゃんに襲いかかろうと腕を伸ばし――……



  そして私は、そんな無礼にも坊っちゃんに手を出そうとした石ころの腕を横から掴み、勢いに乗せて背負い投げをしてやった。

“私の坊っちゃんに触れるだなんて、おこがましいにもほどがありますよ”

 
 ――――ダァン、と路地に音が響くと、私が投げ飛ばした石ころは背中を強打したらしく、ケホケホと汚い唾液を撒き散らした。
 
「……へ?」
 
 仲間の石ころ一粒が間抜けな声を上げ、もう一粒が驚きしりもちをつく。
 

「坊っちゃんのお側にどんな時でもお仕えしお守りすべく、ブラゴブォリン家ではメイドでも護身術に心得があるのですよ」
「トゥンク……ッ」
< 31 / 46 >

この作品をシェア

pagetop