心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 もちろん私の中に拒否という単語はないのだが、無抵抗な私が少し気になったのか、隠しもせず裸体を晒していた私に触れるのを坊っちゃんは少し躊躇われたようだった。


「次は本番だと言ったはずなんだが」
「そうですね」
「つまりこれから本番なんだが」

“なるほど、本番前夜ですね?”

 いざやってくる令嬢との本番に向けた最終確認だと認識した私が、ふとあることに気付く。
 

“汚れてもすぐに着替えられるようメイド服はシンプルな構造ですが、世のご令嬢はメイド服なんて着て初夜には挑みませんね”

 新婚二人の初夜なら、侍女が旦那様になられた坊っちゃんの好みに合わせた夜着を用意しているのだろうが、婚約発表もされていないのに入籍はない。

 けれど迫るらしい本番。

“ならば、お相手様が着ておられるのはドレスなのでは?”


 コルセットはもちろん、ドレス自体も着脱行程が多い。
 シンプルなメイド服を脱がすのとは訳が違うので、いざ本番で脱がすのに手こずる可能性が私の脳裏を過る。

 
「……ドレスを着れば良かったかもしれません」
「ど、ドレスだと!?」
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