心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 キュンキュンを通りすぎギュンギュンと高鳴る鼓動を隠し、私が相変わらず無表情のまま坊っちゃんの指示通りその場で立ち止まると、少しホッとしたのか坊っちゃんの目尻が下がる。


“至高ですね”

 少し気取って俺様風を装っておられる坊っちゃんの、その素の表情を見て私の脳内はカーニバルだ。

 あまりにも可愛いので、今晩はお祝いにプリンを二つ食べようか?なんて考えていると、自身の表情が緩んでいることに気付いた坊っちゃんはキッと目元に力を入れて精一杯私を睨む。


“……まぁ、威嚇する子猫のようで抱き締めたい”

 私の表情のデフォルトが鉄仮面なら、私の心音はもはやギュドルンギュドルンがデフォルトなのかもしれない。


 その罪なまでの魅力で一瞬私の思考を奪っておられた坊っちゃんは、睨んだままごほんと大きく咳払いをする。


「……出せと言ったのは中身ではない、ひ、表皮だ」
「表皮」
「そうだ!だからその、つまりだな」

 
 言いにくそうに坊っちゃんの視線が右へ左へとせわしなく動く。
 
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