心の中だけうるさい私はウチの坊っちゃんが可愛くて仕方ない
 嘘つけ!とソファに置いてあったクッションに顔を埋めながら叫ばれるが、表情が変わらないのだから仕方ない。

“鼓動的には物凄く恥じらっているのですが”

 表情、と指定されるとデフォルト固定してしまっている私には少し難しく、今晩からこっそり自主練しなくてはと決意した。


「お触りになられますか」
「なっ!?」
「閨教育をご希望ならば、喜んでお引き受け致します」
「アッ、教育……合意と呼ぶには怪しい……いやしかしこんなチャンスは……」

 何やらぶつぶつと一人言を呟く坊っちゃん。
 その少し挙動不審なところも愛らしく、まるで出会った頃のよう。

“私の胸から目が離せていないわね”

 何かに葛藤しているらしいが、それでも確かに成人されたとなればこれから婚約者なども出来るだろう。

“いざ坊っちゃんにその時が訪れ、恥をかかない為にもメロメロにするテクを学んでいただかなくてはなりません”

 既にメロメロの私ではどこまで力になれるかはわからないが、それでも他の侍女に閨教育を受けている坊っちゃんを想像したら何故か胸がチクリどころかザクリと痛むから。


「さぁ、坊っちゃん」
 
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