正しい恋の始め方
信号が青に変わり、色とりどりの傘が一斉に揺れ動く。
横断歩道の中程で、ふと視界に入った男性とガッチリ視線が絡み、萌香は思わず足を止めた。彼は雷にでも打たれたように、目を大きく見開いている。
「また会えたね」
「えっ? ……ああ、あの時の……?」
萌香は少し考えてからそう口にしたが、実際には全く記憶になかった。それは、相手を不快にさせない為の社交辞令のようなもので、挨拶されたから返した、というだけだった。
「うん、そうそう」
けれど、萌香の言ったあの時は、偶然にも彼のその時だったようで、会話のキャッチボールが成立してしまった。
ふと我に返り、通行人からの迷惑そうな視線を浴びていることに気付いた萌香は、彼に目配せをして横断歩道を引き返した。
彼は山城拓海と名乗ったが、やはり聞き覚えも見覚えもなかった。それは、絶対と言い切れる。何故なら彼が、一度見れば絶対に忘れないであろう容姿をしていたからだ。要するに、イケメンということだ。
萌香の胸は早鐘を打っていた。
「萌香ちゃん、だよね?」
「え? ……はい」
名前を呼ばれて、萌香の自信は揺らいだ。
やはり何処かで会っているのだろうか。
「良かったら、連絡先交換しない?」
「ああ、はい」
萌香はスマホを操作する彼の横顔を凝視したが、やはり見覚えがなかった。
「じゃあ、近いうちに連絡するね。ご飯でも行こう」
「はい……待ってます」
思わず心の声まで漏らしてしまい、彼の後ろ姿を見送りながら萌香は苦笑した。
横断歩道の中程で、ふと視界に入った男性とガッチリ視線が絡み、萌香は思わず足を止めた。彼は雷にでも打たれたように、目を大きく見開いている。
「また会えたね」
「えっ? ……ああ、あの時の……?」
萌香は少し考えてからそう口にしたが、実際には全く記憶になかった。それは、相手を不快にさせない為の社交辞令のようなもので、挨拶されたから返した、というだけだった。
「うん、そうそう」
けれど、萌香の言ったあの時は、偶然にも彼のその時だったようで、会話のキャッチボールが成立してしまった。
ふと我に返り、通行人からの迷惑そうな視線を浴びていることに気付いた萌香は、彼に目配せをして横断歩道を引き返した。
彼は山城拓海と名乗ったが、やはり聞き覚えも見覚えもなかった。それは、絶対と言い切れる。何故なら彼が、一度見れば絶対に忘れないであろう容姿をしていたからだ。要するに、イケメンということだ。
萌香の胸は早鐘を打っていた。
「萌香ちゃん、だよね?」
「え? ……はい」
名前を呼ばれて、萌香の自信は揺らいだ。
やはり何処かで会っているのだろうか。
「良かったら、連絡先交換しない?」
「ああ、はい」
萌香はスマホを操作する彼の横顔を凝視したが、やはり見覚えがなかった。
「じゃあ、近いうちに連絡するね。ご飯でも行こう」
「はい……待ってます」
思わず心の声まで漏らしてしまい、彼の後ろ姿を見送りながら萌香は苦笑した。