迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる

 もともと身体が弱くて疲れやすいところがあり、彼の負担を減らすためにフィリーネは婚約者という立場でありながら公務にも積極的に参加していた。
 国王はアーネストが学園を卒業したら王位を継承する予定だ。

(陛下は殿下に国王としての権限を徐々に譲渡していらっしゃるけど、まさか……)
 その途端、心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
 表情を強ばらせてアーネストを見たら、ニタリと笑ってきた。

「父上は、次期国王として身の回りで起きた問題は自分で収めよと仰った。だから婚約破棄もおまえの処分も俺一人で決められる。残念だったな!」
 国王がアーネストに言った内容をフィリーネも彼の隣で聞いていたからそれについては知っている。だが、その認識は異なる。

(陛下は殿下が当事者として起こした問題を自分で解決しろと仰っただけ。誰かの諍いを解決しろなんて仰っていないわ。……殿下は間違った解釈をしている)
 思考は恐ろしいほどはっきりしているのに、呆気にとられて肝心の言葉が口から出てこない。
 黙っていたらアーネストが毅然とした態度でこちらに臨む。
「ミリエラを散々虐めたんだ。今さら悔いてももう遅い。精々、新しい夫と仲良くするんだな」

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