迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
第3話
――そして現在に至るのだが。
長時間雨に当たっているせいで体温が奪われ、身体がガタガタと震えていた。歯もカチカチと音を立てていて、歯を食いしばっても止まらない。
それでもフィリーネは己を奮い立たせ、この場を耐え忍んでいた。
(きっとカレンがこの事態をお父様に報告してくれているはずだわ)
学園にはフィリーネ付きの侍女・カレンが侯爵家から一緒について来てくれている。
カレンはフィリーネの二つ上で歳が近く、十三歳の頃から一緒にいるので信頼できる人物だ。彼女なら舞踏会から一向に戻ってこないフィリーネを不審に思い、侯爵に報告してくれるだろう。
(お父様が動いてくだされば、陛下たちにも話が伝わってすぐに助けに来てくれるわ)
現状、フィリーネがマツの木に縄で括りつけられてから半日が経とうとしている。移動に使った三日を合わせても今日を入れたら四日だ。
王都からは早馬を使えば二日足らずでここまで来られる。したがって、そろそろ助けが来てくれてもおかしくはない頃合いだ。
(お願い、早く来て!)
助けが来るのをひたすら祈るフィリーネ。
腕とお腹、足首の三カ所を縄で括りつけられている。その上、両手も後ろ手にされて拘束されているため、身動きが取れない。
フィリーネは一心不乱に祈り続けた。
しかし、どれだけの時が過ぎても助けが来る気配はなかった。
侯爵家の騎士や王国の近衛騎士は有事の際に迅速な行動が取れるよう、日頃から鍛錬を積んでいる。これくらいの悪天候はなんともないはずだ。
だからフィリーネには、来るのが遅い気がしてならなかった。
(あと数時間後経っても助けが来なかったら、体温が低下してで死んでしまうかもしれないわ)
焦燥感と不安感に襲われて心が疲弊していくのを肌で感じる。