迷信でマツの木と結婚させられたカタブツ令嬢、何故か竜王様の嫁になる

第3話

 ――そして現在に至るのだが。

 フィリーネの身体は長時間雨に当たっているせいで体温が奪われ、ガタガタと震えていた。その上、歯もカチカチと音を立てている。
 しかしそれでも、フィリーネは歯を食いしばってこの場を耐え忍んでいた。

(きっとカレンがこの事態をお父様に報告して、助けを要請してくれているはず)
 学園にはフィリーネ付きの侍女・カレンが公爵家から一緒について来てくれている。

 カレンは歳が近く、幼い頃から一緒にいるので信頼できる人物だ。彼女なら舞踏会から一向に戻ってこないフィリーネを不審に思い、公爵に報告してくれるだろう。

(お父様が動いてくだされば陛下たちにも話が伝わるはずだし、すぐに助けが来てくれるわ)
 現状、フィリーネがマツの木に縄で括りつけられてから一日が経とうとしている。移動に使った三日を合わせても四日だ。

 早馬を使えば二日足らずでここまで来られる。そろそろ助けが来てもおかしくはない頃合いだ。
(お願い早く来て)
 助けが来るのをひたすら祈るフィリーネ。マツの木の幹に縄で括りつけられている以上、自力では動けない。
 しかしどれだけの時間が過ぎても、助けが来る気配はなかった。
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