迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
ここからはフィリーネの憶測でしかないが、アーネストから婚約破棄され、糅《か》てて加えてアバロンド侯爵から勘当されたこの二つは、大スキャンダルとして社交界に広まっているだろう。
それは王都だけでなく地方にまで波及するはずだ。ガルシア領は王都から少し距離があるとはいえ、数日と経たないうちにシドリウスの耳にも届くだろう。
(心配なのは社交界新聞の記者がどこまでしぶとく追い掛けてくるかだわ)
社交界新聞。それはオルクール王国の貴族が楽しむゴシップ紙で、貴族の熱愛から不倫まで様々な噂話が纏められている。
今回のフィリーネの話は間違いなく大スクープとして取り上げられているはずだ。
他人の不幸は蜜の味。高貴な身分の者が落ちぶれていく姿ほど美味しいものない。
記者たちはフィリーネがその後どうなったのか調査に乗り出し、あの手この手で調べるに決まっている。
だから崖の上のマツの木がなくなっていることをや、フィリーネがシドリウスと一緒にいるところを記者に見られでもしたら――。
きっと彼らは面白おかしく取り上げて、暇な貴族たちの楽しい娯楽として記事を提供する。