迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる


 誤解されていると判断して、これまでの経緯をつまびらかに説明した。
 ところが、イシュカは顔に憐れみを滲ませる。

「純白のドレスを着た乙女が大湖に落ちてきた以上、生け贄の儀は滞りなく執り行われたことになる。おまえはもう、ご主人様に捧げられたんだ。一度始まった儀式は、精霊契約と同じで取りやめることも逃れることもできない。そんなことしたら、青い炎で焼かれるぞ」

 精霊や竜と交わした契約を破ったら青い炎で焼かれるというのは誰もが知っている有名な話だ。その炎は水を掛けても鎮火することはなく、違反した契約者が絶命するまで燃え続けるのだ。助かる見込みはどこにもない。


 とどのつまり、フィリーネは青い炎に焼かれるかシドリウスに食べられるかのどちらかになる。
 打ちひしがれていたら、イシュカが何かを思い出したようにあっと声を上げた。

「ところで大事な確認を忘れていたが、おまえはもちろん生娘だろうな?」
 あけすけに純潔かを尋ねられ、フィリーネはそれまでの思考が吹っ飛んだ。
 顔が一気にカァと赤くなる。
「な、なななっ! 突然何を言い出すの? じゅ、純潔に問題でもあるの?」

 フィリーネはアーネストの婚約者だったが、キスはおろか手を繋いだこともなかった。
 恋愛に対する知識も経験もゼロに等しい。

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