迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
だが、いくらこちらが正しくともアーネストには通用しなかった。
彼はフィリーネの反論に勃然《ぼつぜん》と怒りを発した。
「おまえは昔から言い訳ばかり口にして愛嬌がない。監督生という権力を笠に着てミリエラを虐めていただけだろうが!」
アーネストはカッと目を見開いて怒鳴った。それからフィリーネから守るようにしてミリエラを抱き締める。
その様子を見てフィリーネは、肩を窄めて唇を引き結んだ。やはり自分の言葉には耳を傾けてくれないと痛感したからだ。
(どうしてか分からないけど、殿下はいつも私の話を聞いてくださらない。だけど他の人の話には傾聴する。……ミリエラ様に味方してしまうのも、想像に難くないわ)
昔はそうでもなかったが、成長するにつれてアーネストはフィリーネの話しに耳を傾けなくなった。今では何か意見を口にしようものなら全否定される始末だ。
そしてミリエラに肩を持つのは、彼女の容姿にも要因があるかもしれない。
ミリエラは、くるんと上を向いたまつ毛に縁取られた橙色の大きな瞳をしていて、肌は白く全体的に可愛らしい顔立ちだ。手入れが行き届いた長い髪は亜麻色で、ハーフアップにしている。彼女の性格を詳しくは知らないが、雰囲気からして天真爛漫そうに見える。
なるほど。自分とはかけ離れた存在だとフィリーネは心の中で感想を述べる。
フィリーネは浅緑色の瞳をしていて、オーバル形の銀縁の眼鏡を掛けている。さらさらとした白銀色の髪はポニーテールにしていて、深緑色のリボンをつけている。どう見ても地味な出で立ちだ。
そしてアーネストが言うところの愛嬌がない。
自分では愛嬌はない訳ではないと思っているが、アーネストが言うのだからそうなのだろう。しかし、容姿がどうだとか愛嬌がどうだとかそんなものは関係ないと思っていた。