迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
「あ、あの……シドリウス様?」
あまりにも長い時間シドリウスに見つめられ、フィリーネはどう反応したらいいのか分からない。羞恥心から徐々に顔には熱が集中する。
やがてシドリウスは甘やかな表情を浮かべた。
「今日もフィリーネが可愛すぎる。絹のような美しい白銀色の髪も宝石のように輝く浅緑色の瞳も、何もかも完璧に可愛い!」
「え?」
さらりと呟かれた言葉を理解するのに数秒かかった。
フィリーネは意味を咀嚼すると、たちまち全身の血が沸騰するのを感じた。きっと、茹で蛸のように全身が真っ赤だろう。
すると見かねたようにイシュカがシドリウスの間に割って入った。
「ご主人様。あなたと違ってまだ十七歳のフィリーネは赤子も同然で純粋なんです。刺激の強い言葉は控えてください」
赤子同然というのは聞き捨てならないが、イシュカが言うようにシドリウスのそれはフィリーネにとって非常に刺激的だった。
(以前に劇場で見た、お芝居の中の台詞みたい)
とはいえ、芝居のような台詞を自分に向けられたことなど一度もない。だから余計にシドリウスの言葉はフィリーネの心を震わせる。
フィリーネの心臓の鼓動は未だに収まることはなく、激しく脈打っていた。
この音がシドリウスたちの耳にまで届いているのではないかと心配になったフィリーネは、手で胸を押さえる。