迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる

第11話


「開けてみてくれ」
「はい」
 シドリウスに促されて、そっとクローゼットの扉を開けたら、中にはビッシリとドレスが詰まっていた。
 ドレスはどれも最新のものばかりで、さらにその下には、数種類の靴や装飾品が入った箱もたくさん置かれている。あまりの多さにフィリーネは目を見張った。

「朝食前のクローゼットは、確かに空っぽだったのに……」
「今フィリーネが着ているワンピースは、家事精霊に作ってもらったものだ。だが、彼女にはファッションの流行が分からない。だから私がフィリーネに似合いそうなドレスや装身具を買ってきたんだ。普通は仕立屋を呼んで服を作るらしいが、今回は急いで買って来たから既製品ばかりだ。……申し訳ない」

 頭を下げようとするシドリウスにフィリーネは慌てた。
 既製品といいつつ、用意されたドレスは豪華で一度にこれだけたくさん買うのは相当お金が掛かったはずだ。
(用意してくださったドレスは、色合いもデザインも私が着てきた服とは別物だわ)

 アーネストに言われていつも落ち着いた色合いの簡素なドレスを身に纏っていた。だからこれほど豪華なドレスを着るのは初めてだ。
「あ、あの。ドレスを着てみてもいいですか?」
「もちろんだ。これらは全部フィリーネの好きにしていい」
 これまで縛られてきたフィリーネにとって、シドリウスの気遣いはとても新鮮で心がくすぐったかった。

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