迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
(もう私は殿下の婚約者じゃないから縛られる必要はないのね……)
未だに自由に生きるのがどういうものなのかは分からないけれど。
少なくともシドリウスの『フィリーネの好きにしていいんだ』という言葉は、フィリーネの心を軽くしてくれた。
好きにしていいのなら、もちろんこのドレスたちを着てみたい。
「私、このドレスに着替えてきます」
早速、ドレスの中から気に入ったものを一着選び、パーティションの裏に回って着替えを始める。
フィリーネが選んだのはハイネックの水色のドレスだ。精緻なレースが肩を包むように形作られ、スカート部分にはフリルがついていて可愛らしい。花を連想させるようなふわりとしたドレスだった。
ドレスには一人で着替えられるようにというシドリウスの配慮が窺える。そんなちょっとした配慮が嬉しくて、自然と頬が緩んだ。
(私のために買ってくれたドレスだもの。シドリウス様にも喜んでもらいたいわ)
フィリーネは今着ているワンピースのボタンを外し、ドレスに袖を通した。
着替え終えたフィリーネはパーティションの外へと歩き出す。
それまで他愛もない話をしていたシドリウスとイシュカは、ひょこっりと姿を現したフィリーネを見て固まった。