迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
「着替え終わりました。どう、でしょうか……?」
何も言わない二人にフィリーネは居心地の悪さを感じる。馬子にも衣装だっただろうか。
華やいでいた気持ちは一気に沈み、もともとない自信もなくなっていく。
ふと、フィリーネはドレッサーに移る自分の姿を観察してみた。
用意してくれたドレスは確かに可愛い。けれど、白銀色の髪にアーモンド型の銀縁眼鏡を掛けたフィリーネが袖を通すと、すべてが野暮ったかった。
(私が着たら折角のドレスも台無しね)
たちまち、フィリーネの心にちくりと痛みが走り、三年前にアーネストから言われた言葉が蘇る。
『未来の王太子妃たるもの、貴族には貞淑さを、国民には倹約であると示せ。それと、眼鏡を掛けているおまえは、ただでさえ年寄り染みて見える。その辺の令嬢のように着飾る必要はない』
アーネストが簡素なドレスを着るよう指示していたのは、フィリーネの容姿が平凡で地味だったからだと鏡越しに納得してしまう。
きっとシドリウスたちも、たくさん豪華なドレスを買ってきたのに素材が悪いせいドレスがもったいないと思っているはずだ。
だから何も言わない。否、言えないのだろう。
浮かれていた自分が恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしたフィリーネは下を向く。
「……すみません、やっぱり着替えてきますね」
くるりと背中を向けてパーティションの裏に逃げ込もうとしていたら、シドリウスに腕を掴まれる。
「何故だ? よく似合っている」
「そんなことありません!」
ぱっと顔を向けたフィリーネはすかさず反論した。その目には涙が滲んでいる。