迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
シドリウスは目覚めてからのフィリーネを思い出す。
彼女の反応はどれもうぶで、どこまでも純真無垢だった。
こちらは純粋な愛情表現をしているのだが、フィリーネの方は慣れていないのか何をしても顔を真っ赤にする。
その反応があまりにも可愛すぎてついフィリーネを抱きしめたら、今にも泣き出しそうな顔をされた。あの時は内心焦った。
本当はフィリーネをずっと抱きしめたいし、肌に触れていたい。しかし、自分の欲を優先させて嫌われたくない。
フィリーネは、様々な悲運に見舞われ身の上だ。これ以上彼女の心を傷つけたくないし、悲しませたくない。
シドリウスはフィリーネに触れたい気持ちを抑え、まずは別の形で自分の気持ちを伝えていこうと決意した。今日プレゼントしたドレスや装飾品はその一環である。
(そういえば、フィリーネは生け贄の意味を勘違いしているような気もするが……毎日私の気持ちを伝えれば嫌でも分かってくれるだろう。私がおまえを手放すことは一生はないのだと)
人間は竜と違って運命の番を愛するとは限らない。
必然的に愛を囁き相手の心を掴む必要がある。
シドリウスはどんな手を使ってでもフィリーネの心を掴もうと考えている。
「次は何をしたら彼女は喜んでくれるだろうか」
悩ましげな溜息を吐いて前髪を掻き上げていたら、イシュカが口を開く。
「運命の番が見つかって嬉しいのは分かりますが、気を緩めないでくださいね」
「無論だ」
イシュカが胡乱な視線を向けてくるのでシドリウスはすっと背筋を伸ばした。