迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
「さて、そろそろ支度しないと」
窓から離れたフィリーネは、サイドテーブルに用意されていた水差しを手に取り、洗面で顔を洗う。
タオルで顔を拭いてから、クローゼットの側にある椅子へ足を向ける。
そこにはシドリウスが買ってくれたドレスや、必要な装飾品が置かれていた。足下には靴も用意されている。
毎朝、必ず椅子の上や足下にはその日着るドレスや小物類が用意されている。これは夜中に家事精霊がやってきて、せっせと準備してくれているからだ。
それだけでなく、フィリーネが目覚めるといつも部屋は綺麗になっていて、顔を洗う水も用意されている。至れり尽くせりで非常に快適だった。
「いつもありがとう。早速着替えるわね」
家事精霊の姿は見えないが、もしかしたらどこかにいるかもしれないのでフィリーネは声に出してお礼を伝える。それからパーティションの裏に回って寝間着のワンピースから用意されていたワンピースに着替えた。
今日のドレスは淡い緑色の生地に水玉と小花柄がプリントされたドレスだ。腰回りに付いている深緑色のシフォンリボンがアクセントになっていて可愛らしい。
フィリーネはドレッサーで自分の姿を確認した。
シドリウスが言ってくれていたように、眼鏡がなくなったお陰で顔立ちがはっきり分かるようになった。それと、心なしか顔の印象も明るくなったような気がする。
最後にブラシで白銀色の髪を丁寧に梳かすと、フィリーネは食堂へ向かった。