迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
エッグベネディクトとタマネギのスープを食べ終えたフィリーネは、ナプキンで口元を拭く。空になった皿は家事精霊の魔法ですぐにテーブルから消えてなくなった。
因みに完食できたのは、家事精霊がフィリーネの食事量を慮って量を調整してくれたからであり、フィリーネの食事量が増えたからではない。
フィリーネは自分のお腹へと恨めしい視線を投げた。
(このままだと、シドリウス様に食べられるまでに充分なお肉が蓄えられないわ)
自分のお腹を指で摘もうと試みるも、摘まめる肉はほとんどなかった。
シドリウスはきっと食べ応えのある、肉付きの良い身体を所望しているはずだから、なんとかこの肥育期間の間にたっぷりと太りたい。なのに、状況は遅々として進んでいない。
フィリーネは思い詰めた表情でお茶を啜っているイシュカに話しかけた。
「ねえ、イシュカ、折り入って相談なんだけど」
「相談て何?」
ポットから追加のお茶を注ぎながら、イシュカはのんきな声で尋ねてくる。
「私、シドリウス様に食べられるまでにもっと身体にお肉を蓄えておきたいの。どうやったら太れると思う?」
カップに口をつけていたイシュカはお茶を吹き出し、ゴホゴホと咽せる。
「に、肉を蓄えるだって?」