迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
イシュカが訝しそうに訊いてくるので、フィリーネは胸の前で手を組んで深刻な顔で頷いた。
「ええ。今よりも肉付きが良ければシドリウス様は喜んでくださるはずだから」
食事をほとんど取らないイシュカに訊いても仕方がないのかもしれないが、何かいいアドバイスがあるのなら是非とも言って欲しい。
フィリーネは藁にも縋る思いで尋ねたが、イシュカの方は口元を手で押さえて必死に堪えていた。
「薄々感じてはいたけど、やっぱり天然なの? 生娘だとしても食べる意味を間違える生け贄はいなかった……。これ、めちゃくちゃ重症でしょ」
イシュカは自分の呟きに笑壺に入った。しまいには本格的にお腹を押さえて笑い始める。
「どうして笑うの? 私は真剣に悩んでいるのに!」
「し、知ってる、知ってるけど……ぐふぅっ」
イシュカはお腹を押さえて目に涙を溜めている。
まだまだ彼の笑いは収まらず、床の上で転がりそうな勢いだ。
フィリーネは自分の真剣な悩みをおざなりに扱われた気がして唇を尖らせた。
「気持ち悪い笑い声を上げてどうした?」
すると、入り口の方から低くて落ち着いた声がした。