迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる

第14話



 フィリーネが顔を向けるとシドリウスが立っている。
 シドリウスは今日もその美貌には磨きが掛かっていて、目のやり場に困るほどだった。
 フィリーネは椅子から立ち上がって挨拶をする。

「おはようございます、シドリウス様」
「おはようフィリーネ。折角の食事をイシュカが台無しにしているようだな」
 シドリウスはぴくりと片眉を跳ね上げて、イシュカへ鋭い視線を向ける。
 ようやく落ち着いたイシュカは、咳払いをしてから「申し訳ございません」と謝った。

 別に食事を台無しにされた訳ではないので、フィリーネはシドリウスに誤解だと説明する。
「イシュカは悪くありません。ただ他愛もない話をしていただけです」
 フィリーネは相談内容については触れず、言葉を濁した。食べられる本人に食事量が変わらないと打ち明けてガッカリさせたくなかったからだ。

「フィリーネがそう言うのなら構わないが……」
「はい、大丈夫です」
 笑みを浮かべて返事をしたら、シドリウスはそれ以上は追求せずに引き下がってくれた。
 シドリウスはテーブルを一瞥して口を開く。

「料理は口に合ったか?」
「はい。とっても美味しかったです」
 シドリウスはフィリーネの感想を聞いて満足げに頷き、ゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくる。

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