迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
(シドリウス様は私に太って欲しくてイチゴを食べさせようとしていただけ。あと、私が成人するまでは大切に可愛がるって仰っていたから、これが彼の可愛がり方なんだわ)
それなのに逃げようとして、シドリウスの親切を無下にしてしまっている。
このままでは生け贄の意味でも愛玩の意味でも失格だと思った。
(いつまでも恥ずかしがっていたらダメだわ。慣れる努力をしなくちゃ!)
フィリーネは深く息を吸い込み、イチゴを持つシドリウスの腕にそっと両手を添えた。
「……不快じゃないです。シドリウス様にされて不快なことなんてありません。私がただびっくりしてしまっただけなんです」
本当は自分から異性の腕に手を添える事態が恥ずかしい。
けれど、この世の終わりのような顔をされてしまっては放っておけなかったし、いつまでも慣れないという理由で逃げ続けるのは嫌だった。
彼の厚意に応えたい。
腹を括ったフィリーネは、シドリウスが持つイチゴへとゆっくり顔を近づける。それから口を開いてイチゴをパクリと一口で食べた。
やはり最後は恥ずかしくなって固く目を閉じる。
「んん!!」
ところが、すぐにフィリーネは目を開いた。
思いのほかイチゴが甘くて、羞恥心が吹き飛んだフィリーネは目をキラキラと輝かせる。
「このイチゴ、甘くて美味しいです!」
素直な感想を述べたフィリーネは、食べさせてくれたシドリウスへと視線を向ける。
「あの、どうされましたか?」
フィリーネはきょとんとした表情で首を傾げる。