迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる
すると、慌てた様子でミリエラが両手を左右に振って弁解してきた。
「ち、違います。私が聞いたお話は、大湖の近くにどんな相手でも嫁にもらってくれる素晴らしい方がいらっしゃるという内容ですよ。だからその方にフィリーネ様をもらっていただくのはどうかなって思ったんです!」
どうやら生け贄の提案ではないようで、フィリーネは一先ずほっと胸を撫で下ろす。
話を聞いていたアーネストは興味深げに顎に手を当てた。
「ほう。そんなもの好きがいるのなら、是非教えてもらいたい。今すぐフィリーネをその者のところへ送ろうじゃないか! 一体誰なんだ?」
尋ねられたミリエラは一層笑みを深くする。
「その相手は……大湖近くの崖に自生しているアカマツです!」
「は?」
思わず素っ頓狂な声を上げたのはアーネストだ。
フィリーネの方も思考が停止し、理解するまでに数秒かかった。
(アカマツって木の名前だと思うんだけど……まさか、マツ木と結婚しろって言うの!?)
あまりにも衝撃的な縁談に、フィリーネは開いた口が塞がらない。
ミリエラはうふふ、と無邪気に笑いながら話を続けた。