迷信でマツの木と結婚させられた悲運令嬢、何故か竜王様の嫁になる


「そのマツの木には古くから精霊が宿っているらしく、行き遅れの娘がいたら精霊が嫁としてもらってくれるのだそうです。ね、フィリーネ様にぴったりのお相手でしょ?」
 恐らくそれはただの迷信で、なかなか結婚しない娘に痺れを切らした両親や親族たちが「結婚しないならマツの木の精霊と結婚させるぞ」と脅し文句に使うのだろう。
 にもかかわらず、ミリエラはその話を本気で信じているらしい。
 いよいよ目眩を覚えたフィリーネはこめかみに手を当てて、ため息を吐いた。

「マツの木と結婚だなんて悪い冗談にもほどがあります。殿下、まずは国王陛下に私の処遇をどうするかを伺ってくださいませ」

 この婚約は政略結婚なので、当事者同士が勝手に婚約を解消するなど許されない。解消したいのであれば各家長の許可が必要になる。
 しかし、一抹の不安がフィリーネの頭を過った。
(嗚呼、陛下は床に伏せっていらっしゃるのに、こんなことで煩わせたくないわ)
 アーネストの父であり、オルクール王国の国王は一年ほど前から闘病生活を送っている。

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