恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
そこには、色とりどりのおとぎ話に出て来そうな家が建ち並び、道には花が一面咲いている。
凄く細かい所まで、色を重ね合わせてる。
やっぱり、自分の中に思い描くものがあるんだ。
引き込まれる。
「目の前の景色でないのに、これだけ創造性豊かに描けるんですね」
その言葉に手の動きが止まった。
「あっ、すみません。邪魔してしまって。あまりに素敵でつい…」
「いえ、いいんです。ここで描くのは下絵です。これを元に自宅のアトリエで描きますから」
「アトリエ・・・素敵ですね」
照れて微笑むその横顔が、凄く色っぽく見えた。
年頃は私より少し上かな。
目鼻立ちがはっきりしているけど、髪に隠れ、眼鏡で分かりづらい。
「また、見せていただけますか?とても勉強になります」
「えぇ、私のこんな絵で良ければ」
その人の優しい笑顔に、私の冷め切った心の底が、少し揺れ動いた。

それから毎週土曜日になると、土手に向かい、彼に会うのが習慣になっていた。
「こんにちは」
あとから来た彼から声を掛けてくれた。
「こんにちは」
「絵、だいぶ仕上がって来ましたね。・・・少し、口を挟んでもいいですか?」
「え、えぇ・・・」
「ここなんですけど・・・」
< 12 / 31 >

この作品をシェア

pagetop