恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
「お恥ずかしいですね」
「今日は、この絵だけなんですか?」
「もう1枚出展するか迷いましたが、今回は1枚だけなんですよ」
「そうでしたか。あとの1枚もまたいつか、見せて下さいね」
「えぇ、一度自宅のアトリエを見に来て下さい」
井上さんは、自宅の住所を教えてくれた。
「お待ちしてます」
「はい。では失礼します」
挨拶をして、外に出た。
どうしたんだろう、私。
こんなにドキドキするなんて、もうだいぶ昔だったように思う。
確信した。私、井上さんに恋してる。

それから数日後、裕司兄さんから連絡があった。
実家には、人が集まるお盆とお正月にだけは、顔を出すように言われていた。
親戚が集まるから、体裁上、仕方ない。
裕司兄さんは、私が家を飛び出してからも、ずっと連絡してくれていた。
「仕事は順調か、弥栄子」
「まぁね。それなりに忙しいよ。そうだ。部長が役員就任するから、もしかして次の部長は私かも」
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