恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
「そうか。いや、実はな。パリ支社に1人、管理職を赴任させようと思ってるんだよ。弥栄子、2年間居たから、新しい人に行ってもらうより、弥栄子に行って欲しくて」
「お父様が許すはずないでしょ」
「もう、実権は兄貴だし、俺も異動や採用は権限持ってるから、考えてて。いつでもいいから」
今の職場の事を考えると、私が居なくなると、仕事が回らない。
それに、やっと部長に手が届く。
「うん、ありがとう。そうだ、兄さん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「どうしたんだ?」
「実は、ある画家の風景画が、凄く素敵でね。ほら、パリ支社の近くに、20年前まで南都で働いていて、ご主人の絵画のお店手伝うのに辞めた人いたでしょ?そのお店、まだあるか調べて欲しいの」
「あぁ、松井さんだね。いいけど、どうして?」
「その松井さんのお店、風景画飾ってたから、その人の絵がもしかして、誰かの目に留まるかと思って」
「絵は、そう簡単じゃないぞ。まして、パリで。まぁ、店に置いてもらう分には問題ないだろうから、調べてみるよ」

次の日、兄さんから、まだお店が営業している返事があった。
「ねぇ、お願い次いでなんだけど、兄さん、個展に行って、井上昇っていう人の絵、松井さんのお店に置くように、上手く話を持ち掛けてよ」
「自分で言えばいいじゃないか」
「私、南都の名前は、名乗ってないの。だから、何となく言いにくくて」
「そんなことして、その人は喜ぶのか?」
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