恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
静かに微笑む、落ち着いた雰囲気の井上さんは、心が落ち着く。
「眼鏡、描けないんですね」
「えぇ、着飾るとかあまり興味がなかったんですが・・・」
「個展に立たないといけないから、気に掛けたんですね」
「それも勿論ありますが・・・」
私が井上さんを見ると、井上さんは照れ笑いしながら、
「いえ、何でもないです。さぁ、散らかっていますが、こちらへ」
そう言って、そのまま奥の絵を描いている所に、案内された。
たくさん並んでいる絵の中に、一際目を引く絵があった。
「どれも素敵ですけど、この絵、惹きつけられますね」
「この絵が、先日言っていた、あと1枚の絵なんですよ」
幻想的な絵で、丸太で作られた部屋、その窓から見える景色は、花が彩られ、小鳥達がさえずり、青空が広がり、木々に光りが差し込んでいる。
彩る花の細やかさ、木漏れ陽は、本当に光りが射しているように輝いて見える。
「こんなに素敵なのに、どうして出展しなかったのですか?」
私は不思議に思い、聞いてみた。
「もう少し、描きたいことが出来ましてね」
井上さんは優しく微笑み、その絵を見つめていた。
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