恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
「そうですか・・・じゃあ、その絵がまた出来たら、見せて下さいね」
「もちろん。1番に声を掛けますよ」
優しくも色気漂う瞳に見つめられて、胸の鼓動が跳ねる。
「そうだ、油絵、使ったことありますか?」
「いえ、そこまでは・・・」
「楽しいですよ。きっと田中さんは、気にいると思います。少し描いてみますか?」
そう言って、服が汚れないようにと、服を覆うようなエプロンを持って来てくれた。

「ここに色を置いて・・・」
井上さんがお手本を見せてくれた。
「ただ自分の好きな色を好きなように塗ってみて下さい」
好きな色をキャンバスに彩る。
「ここ、白を合わせたら、雰囲気変わりますよ。貸して」
私から筆を取り、体温が分かるくらいに近づく。
「ねっ、いい感じでしょ」
顔が近くて、ドキドキする。
こんなに胸がときめいたの、初めてだ。
「は、はい。本当に素敵ですね。ありがとうございます」
「もし良かったら、先日描いていた夜空の絵、ここで描いてみますか?」
「あの、お仕事の邪魔になりませんか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。土曜日はここに居ますから」
私は、ウキウキしながら、アトリエをあとにした。
< 20 / 31 >

この作品をシェア

pagetop