恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
【真実は、愛の終わりを告げる】
次の土曜日、道具一式と、念のために着替えを持って、井上さんの家に向かった。
私がアトリエに入るなり、
「弥栄子さん!やりましたよ!」
そう言いながら、私に抱きついて来た。
「どうしましたか?」
「ついさっき、私の絵が、パリで売れたと連絡がありました」
私の体から腕を解くと、嬉しそうに喜んでいた。
「良かったですね」
「えぇ。絵が売れるなんて、幸せ過ぎて怖いぐらいです」
そう言って、私の髪を手で掻き上げる。
「それと…あなたと出逢えた事も」
そのまま私の顔を引き寄せて、口づけを交わした。
しばらく続く熱いキスの嵐に、私は酔いしれる。
その時、2人の時間を邪魔するように、インターホンが鳴った。
「また後でゆっくりと」
そう言って、私から離れた。
「はい。あっ、どうぞ中にお入りください」
井上さんは、訪問者を出迎えに、玄関に向かった。
「すみません、急に。近くまで来たものですから。先ほど、先方から、次の絵の依頼が来てましてね。そのご報告に」
「そうですか!それは嬉しいお話です。さぁ、どうぞ」
話をしながら、井上さんの後ろから入って来たのは、裕司兄さんだった。
「・・・弥栄子。弥栄子も来てたのか」
「兄さん・・・」
し、しまった!つい、普段のように呼んでしまった。
「なんだ。井上さんに、本当の事を話したのか?」
「兄さん?本当の事?・・・どういう・・・ことですか?」
兄さんは私を見て、バツが悪そうな顔をしたけど、もう、時すでに遅し。
正直に話すしかない空気になっていた。
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