恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
兄さんが今までの経緯を、井上さんに説明すると、井上さんの顔は強ばり、怒りが込み上げているように、顔が赤くなっていた。
「そうですか。そうですよね。今まで日の目を見なかった私の絵が、突然パリに置くとか、あり得ないですよね」
「でも、売れたのは事実ですから」
兄さんが、庇うように声を掛けた。
「チャンスをくださった事には、感謝してます。ただ・・・」
井上さんは、私の顔を見つめた。
「何故、偽名を使って、嘘を?」
「・・・ごめんなさい。南都の名前を出したくなくて、つい・・・」
「今までの君の言葉も、私と過ごした日々も・・・全部嘘だったんだね」
「ち、違うわ」
「出て行ってくれないか。頼むよ」
「井上さん・・・」
「私が冷静でいられるうちに、頼むから出て行ってくれ。そして、二度とここには、来ないでくれ」
「あの、妹は」
「兄さん。いいの、もう」
私は荷物を持って、井上さんの横を通り過ぎ、彼を見る事なく家を出た。
彼氏と別れるなんて、何度も経験した。
なんて事ない。
それなのに・・・
涙なんて流したことなかったのに・・・
今回は、勝手に涙が溢れ零れた。
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