恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
あのあと、絵の出品まで断ったんじゃ無いかと気になってた私に、兄さんが連絡をくれた。
「一旦は断られたよ」
「どうしよう。絵は認められたのに・・・」
「でも、松井さんが、直接話がしたいって言ってくれてね」
「松井さんが・・・」
「彼の絵を買った人の知り合いが、絵を見て自分も欲しいと、店に来たらしい。どうしても描いて欲しいと、伝えたみたいだよ」
「そう、それでどうだった?」
「俺も、確かに弥栄子から頼まれたけど、公平な目で絵を見て、心が動いたから、パリに送ったこと伝えたら、ようやく首を縦に振ってくれたよ」
「そう、良かった・・・兄さん、ありがとう」
「弥栄子、大丈夫か?すまなかった。つい口走ってしまって・・・」
「いいのよ。だって、私がお願いしたことだし、それに私の願いは叶ったんだから」
「好きだったんだろ?」
「うん。でも、いいの。嘘をついた私が悪いんだから。それに、付き合ってもないしね。また仕事に打ち込むわ。そうだ!来週早々に、部長が決まるらしいの。連絡するね」
私は、兄さんが気にしないように、気丈に振る舞った。
「あぁ、分かった」
兄さんの電話を切って、あの夜、最後に2人で色を付けた絵を眺めた。

良かった…
彼の絵が、パリの人達の手に渡る。
気持ち、切り替えないと・・・
一度でも彼の肌に、触れられて良かった。
あれっ・・・涙が・・・
好き、って感情じゃない。
きっと愛してた。
彼と出逢った時からの事を思い出しながら、私の涙は止まらなかった。
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