恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
パリに来てから、一度見に来たけど、見ると切なくなって、しばらく遠のいていた。
「こんにちは。ご無沙汰しています」
「弥栄子さん、お久しぶりね」
「絵を見たくなりまして。宜しいですか?」
「もちろんですよ。どうぞ、ごゆっくり」
絵を見て回ると、どれも素敵だけど、細かい色使いで描かれた、庭園の風景画があった。
「これ、いいですね」
「あっ、それですか?それ、日本の方が描いた絵ですよ。井上昇さんていう方です。日本では、最近、よく個展されてるらしくて」
「そうですか」
やっぱり、私は井上さんの絵が好きなんだ。
自然と目に留まるくらいなんだから。
2年前より、優しい感じがする。
「その絵、気に入りましたか?」
「えぇ」
「直ぐに売れますよ。日本人画家の細やかさを気に入られる方もいますから。この方の色使い、凄く繊細なんですよね」
よく知ってます。
そう自慢したくなる。
「素敵ですね。では、また来ますね」
「はい、お待ちしてます」
あれから2年経っても、井上さんが評価されている事を聞けて、嬉しかった。

さぁ、仕事の前に、ランチにしよう。
私は、会社の近くのオープンテラスのカフェに寄った。
「そうだ、個展やってるって言ってたなぁ」
SNSで探して見ると…あった!
< 29 / 31 >

この作品をシェア

pagetop