恋を忘れたアラフォー令嬢~遅咲き画家とのひとときの恋
父は私の何も知らない。何も見ていない。
この2年間、私なりに会社の経営も勉強した。
南都商事の、父や兄さん達の少しでも力になれるように。
ここに私の居場所は、無かったんだ。

そしてお見合いの日。
御曹司と聞いて、少しは期待してたけど、お見合いをした相手は、最悪だった。
「ママ、緊張するよ」
「大丈夫よ。ママが隣にいるから」
小声で話をしているようだけど、しっかり聞こえた。
それからも、何かといえば、
「ママ、どうしたらいい?」
の声が聞こえる。
背筋がゾクっとした。
「では、2人でお庭でも散歩してらっしゃい」
2人で庭に出たけど、もう無理。
「や、弥栄子さん」
「私、あなたとの結婚はお断りします。では、失礼します」
頭を下げて、その場から立ち去った。

案の定、帰ってから父は激高し、
「もう、好きにしろ。出て行け!」
その言葉に、裕司兄さんだけが立ち向かってくれたけど、母の黙っている姿にも呆れて、私は荷物を纏めに2階に上がった。
「お嬢様。出て行かれるのですか?本当に出て行かなくても・・・」
「友江さん。今までありがとう。もう、限界なの。こんな縛られた人生に」
「お嬢様・・・私は、ずっとお嬢様の味方です。どうかそれだけは心に留め置き下さい。それと、これ奥様からです」
それは、私名義の通帳と印鑑だった。
「どうぞ、奥様を許してあげてください。いつも弱い自分を、責めていらっしゃいますから」
ずっと小さい頃から、母の代わりに可愛がってくれた、友江さんを抱きしめた。
「ありがとう。家が決まったら、連絡するから。お母様にも伝えて」
出る涙も無く、私は家を出て行った。
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