ラストオーダー
目を開けると、そこは砂埃を被ったマシンだらけの部屋だった。ノイズが存在しないその世界を暫くじっと見つめて、次いで体表の、四肢の感覚がじわじわと伝達されていることに気づく。ヴァーチャル空間でそうしていたように、右手を持ち上げる。視界に映る5本の指は、人間のそれとは違う。軽量性と耐久性を兼ね備えた金属で構成されていた。ついで、左腕を、長椅子に投げ出された両足を見つめた。人間によく模倣してある、人型アンドロイド――私が、かつて彼にねだった現実世界に存在するための身体だった。覚えていてくれたのか。
慣れない脚で立ち上がり、あたりを見回す。窓一つないのは、施設がつくられた当時のガラスの加工技術では、頻繁に来る熱波からマシンを守れないからに違いなかった。電球が照らし出す薄暗い空間、こんなところで彼は最期を過ごしたのだろうか。
歩き出そうとすると、左手から何かがすり抜けた。音を立てて落ち、転がったそれを拾い上げる。昔、彼にその意味を聞いた気がする。まだ完全には立ち上がらない、優先度の低い記憶への問い合わせを実行するよりも、今は告げられた彼の願いを叶えるのが先だ。もとある場所へと嵌めて、落ちないように手は握っておく。
身体に転移する際に、必要なマシンのマニュアルや、その設置場所も私の中に組み込まれたようだった。これから操作を行うメインコンピュータは、埃をかぶっていてもすぐに分かった。そちらに歩を進めていく。立ち並ぶ幾つものマシンを通り過ぎ、メインコンピュータのすぐそばまで近づいたとき、視界の隅になにか似つかわしくない物が映った気がした。
慣れない脚で立ち上がり、あたりを見回す。窓一つないのは、施設がつくられた当時のガラスの加工技術では、頻繁に来る熱波からマシンを守れないからに違いなかった。電球が照らし出す薄暗い空間、こんなところで彼は最期を過ごしたのだろうか。
歩き出そうとすると、左手から何かがすり抜けた。音を立てて落ち、転がったそれを拾い上げる。昔、彼にその意味を聞いた気がする。まだ完全には立ち上がらない、優先度の低い記憶への問い合わせを実行するよりも、今は告げられた彼の願いを叶えるのが先だ。もとある場所へと嵌めて、落ちないように手は握っておく。
身体に転移する際に、必要なマシンのマニュアルや、その設置場所も私の中に組み込まれたようだった。これから操作を行うメインコンピュータは、埃をかぶっていてもすぐに分かった。そちらに歩を進めていく。立ち並ぶ幾つものマシンを通り過ぎ、メインコンピュータのすぐそばまで近づいたとき、視界の隅になにか似つかわしくない物が映った気がした。