君と一番の恋をする
とんでもないことを言い出したから、びっくりしてしまった。
……ここまで言われたら、否定なんて、簡単にできなくなってしまうじゃないか。
だけど、なぜかうれしい。……私のこと、見ててくれたのかもって。こんな感情、私らしくないって分かってても。
「さ、先輩。6時間目が始まるまでに保健室行って着替えましょうか」
「あ、うんっ!」
陸人くんが立ち上がったので、私も腰を上げる。
その大きな背中を追いかけて隣まで行って、そこから並んで歩く。
「明日も学校だよね。制服どうしようか~」
「乾きますかね。結構濡れましたけど」
「どうかな〜。ま、明日のことは明日だよ!」
「あいかわらずですね。先輩」
―――陸人くんに置いて行かれたような気がしたから、もやもやするんじゃない。
私が、陸人くんのことを好きだから、もやもやするんだ。
初めてじゃないから心のどこかではこれが恋だってずっと前から分かってたはずなのに、認めたくなかった。
だって、認めてしまったら、辛くなるから。
好きな人には好きな人がいて。それは、私の妹で。……ううん、それだけじゃない。
私と陸人くんはあくまでも侑人とまーほをうまくいかせるために出会った、友達でも先輩後輩でもない、それ以下。ただのビジネス関係だから。
絶対にうまくなんていかないって、解ってるから。
だから私は、陸人くんと距離を置くべきなんだ。私との関係が誤解されないように。……この気持ちを忘れて、ちゃんと、正しい距離で接することができるように。