君と一番の恋をする

「そうそう、あの二人って、実は付き合ってるらしーよ」

「えっ、姫役の真由帆ちゃんと、騎士役の磯田くんが!?ほんとに?」

「マジマジ。誰かが、空き教室に二人っきりで密会してるの見たんだって〜。それに一緒に演技してたら、いやでも好きになっちゃうでしょ」

「それもそうか」

「てか、美男美女でめちゃくちゃお似合いじゃん!」



……美男美女。お似合い。そう、言われても仕方ないか。

私はなぜか、納得していた。


まーほが美少女で敵わないことなんて、ずっと前からわかってたこと。

才色兼備で、自由に生きてるのに自然と周りには人が集まってきて。

……劣等感なんて、もうないと思ってた。そんな言葉、もう忘れてたはずなのに。


私とまーほ、彼女にするならどっちって聞いたら、きっとみんながまーほを選ぶ。

それは、陸人くんだって。

なんの罰ゲームで、私を選ばなきゃならないんだろうか。


私は身体を立て直して、再び歩き出す。

すると、長いドレスに足が引っかかって、そのまま顔から倒れた。
痛みが全身に走る。


……こんなにきれいな衣装を着こなせず、無様に転んだ私なんて。

こんな、なにもない私に、王子様なんて来るはずない。




―――――白雪姫には、なれない。


悲鳴が聞こえたところで、私の意識は途切れた

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