君と一番の恋をする
side 陸人
俺が初めて麻里花先輩に出会ったのは、この高校に入ってからじゃない。
向こうは覚えてないみたいだけど―――ちょうど一年前のこの日、だった。
侑人に学校見学のついでに来いって言われて、中三の秋に等花高校の文化祭へ行った。
言われたのが急だったから予定の空いてる奴なんて誰もいなくて、結局俺は一人で行くことになってしまった。
侑人に言われたから行くなんていうのは癪だが、まだ進学先の高校を決め切れていなかったから、まあいい機会だ。
校内に入れば、けっこう盛り上がっていて、中学の文化祭とは比べ物にならないくらい本格的だった。
「あっ、そこの君!中学生?」
「……なんすか」
校舎に入るとき、一人の女子生徒にでかい声で呼び止められた。
「もしかして入学希望!?見学っ!?」
「……いや、別に」
俺より頭半分くらいの身長で、こちらを見上げる。
初対面なのにすげーぐいぐいくる、と思った。
コミュ力お化けかよ。
「……兄が、この学校の生徒だから。それで」
「そうなんだ!じゃ、よかったら見てって!」
バカ真面目に答えたら、女子生徒は抱えていた紙の束のうち1枚を俺に差し出してきた。
なんかのチラシっぽい。
俺は素直に受け取った。
「午後1時から、吹部の演奏があるの!もしよかったら来てね!」