君と一番の恋をする
そして俺に、眩しいほどの笑顔を向けてきた。

返事をする前に、女子生徒は別の人にまたチラシを配っていた。

台風みたいな人だな。

そんなことを考えながら、チラシに目を落とした。



……んで、結局来てしまった。

照明の落とされた体育館内へ案内され、適当なところへ腰を下ろす。

まあ、あんなに推されたら、さすがの俺でも無視はできない。


手元には、さっきの吹部のチラシと、入口でもらった手作りのパンフレット。

薄暗い中パラパラとめくっていると、顔写真付きの部員紹介というのが目に入る。

……あの人は吹部、なんだよな?

疑いながらも目を通していくと、ついさっき見た顔を発見した。


肩につかないくらいの髪に、ぱっちりとした大きな瞳。写真の中では大げさなくらいの笑顔で、元気の象徴みたいな顔だと思った。


―――――1年4組 佐藤麻里花。


そう、書いてあった。

1年てことは、俺の兄貴と同学年なのか。……なんてのはどうでもいい。



アナウンスが入り、全ての照明が落とされ、次の瞬間舞台がパッと明るくなる。

間髪入れずに演奏が始まる。

音楽のことは、正直さっぱりだけど。

なんか、すごいと思った。身体に響いてくるというか。


すると、黒い棒みたいなの―――たぶん、クラリネットと呼ばれる楽器を演奏する、あのチラシ配りの女子生徒を見つける。

そして、たった一瞬だけ目があった。……たぶん、気のせいだけど。

でも、いろんな感情が合わさり心臓がいつもより高鳴っていたのは、気のせいじゃないと思う。
< 111 / 150 >

この作品をシェア

pagetop