君と一番の恋をする
―――そして、この学校に入学してしまった。
兄貴が通ってるから親も特に反対はしなかったし、担任も納得してくれた。
明るい水色のブレザーにズボン。こげ茶色のネクタイ。まさかこの制服を自分が着るとは思わなかった。
……別に会えるかもなんて期待してない。
会えたとしても、知り合いになんてなれないだろう。同学年じゃない。相手は先輩。
正直、今までなんにもしなくたって女は寄ってきた。人間関係には苦労してこなかった。
……だから、自分から接点を作るやりかたなんて、分からない。
だけど、なんかとんでもない奇跡が起きてしまって、今俺は、佐藤麻里花の隣にいる。
これが正しくないと分かっていても。
たとえ先輩が、侑人のことを好きでも。
確かに、俺は年下で向こうは同級生だもんな。そりゃ侑人を好きになるだろう。
ずっと考えてた。知らなかったとはいえ、あんな尾行デートに誘ったことを。
申し訳ないって。
麻里花先輩がもしかしたら侑人のこと好きかもって気が付いたのは、誘った後のこと。
最初はあの『早瀬奏太』って人と付き合ってたりとかするのかなって思ってたけど、なんかただの幼なじみらしいし。
後悔しても仕方ない。できるだけ、俺との関係を勘違いされないようにとか、なるべく傷つかないようにとか、あの日はそればっかり考えてた。
最後、帰ろうとしたとき、偶然にも侑人と真由帆の決定的な瞬間を見てしまった。
……麻里花先輩には、悲しい顔をしてほしくない。俺はその一心で、彼女の腕を強引に引っ張った。