君と一番の恋をする
「そりゃ、人生で3回しかない高校の文化祭を、最後くらい楽しんでほしいからね」

「……」



私は返事を待たずにベッドを降りる。



「じゃあ私、そろそろ帰らないとなー。……ありがとう、ばいばい、陸人くん」



上履きを履いて、立ち眩みに耐えながら出口に向かう。

陸人くんは優しいから、私がここにいたらきっと後夜祭になんていかない気がする。

だから―――。



「っ、麻里花先輩!」



外の雑音が全てかき消されるくらいの声が響いた。

私はびっくりして思わず足を止め、振り返る。
陸人くんがこっちに近づいてきて、動いてしまったら触れ合いそうな距離になる。



「俺、送っていきますよ。先輩、まだ体調悪いだろうから」



陸人くんが伸ばす手を、私はよけてしまった。



「……え」



……これ以上、優しくしないでほしいよ。こんなに真正面から優しくされたことなんてなくて、勘違いしてしまいそうだから。



「……ごめんなさい」



私は頭を下げて、保健室を出た。
ドアを閉めるけど、陸人くんは追いかけてこない。

よかった。間違ってない。間違っちゃだめ。
陸人くんが追いかけるのは、まーほのはず。


私はこの気持ちに、終止符を打たなきゃならない。
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