君と一番の恋をする
「俺が、先輩と出かけたいんです」

「……私となんて楽しくないよ、きっと」

「そんなことないです」



私は、近くにいちゃいけない。離れなきゃならない。

陸人くんだって、そう思ってるはずなのに。

……読めない、気持ちが。陸人くんの心が、見えない。


しばらく続いた沈黙を、陸人くんが破った。



「……分かりました。じゃあ、連絡しておくので。気が向いたら来てください」



そう言い残して、去っていった。

私は一息ついて、その場にしゃがみ込む。

クラリネットを入れたケースが床にぶつかり、鈍い音を立てる。

6時過ぎの暗くなった冬の空を、私は窓からぼんやりと眺めていた。

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