君と一番の恋をする
侑人先輩も楽しそうだったし。

“よければまた誘っていいかな”って言われたから、私はそれに頷いた。

別に、深い意味はなく。

……だけど、裏にはあんなことがあったなんて、思いもしなかった。



私は突然、部活終わりの放課後に陸人へ呼び出された。

男バスと女バスは同時に終わることが多いから、体育館前に集合することになっている。


……それで今、陸人にどこかへ連れられてるんだけど。

そういえば用件を聞いてなかったなと思い口を開こうとしたところで、すぐ前を歩いていた陸人の足が止まった。

止まった先は、空き教室。1年5組―――つまり私たちの教室のすぐ近く。

がらりとドアを開け、二人で教室へ入った。


……なんだこの男。なんかしゃべろうよ。自分から呼び出したんだから早くしてほしい。

と思っていたら、机に寄りかかりながらやっと口を開いた。



「なあ真由帆」

「なに」

「―――フラれた。先輩に」



とかちょっとらしくなさそうに言うもんだから笑いそうになったけど、さすがに止めとく。

どうせ告白して断られたんじゃないんだろう。あの人はちゃんと断るのが怖くて、できるだけ傷つかないようにって言葉を探すだろうから。
< 123 / 150 >

この作品をシェア

pagetop