君と一番の恋をする

途中まではどうせ一緒なので、陸人の最寄り駅まで二人で電車に揺られる。

プシューっと電車のドアが開いた。



「ありがとう、真由帆。またな」

「うん。じゃ、また明日」



軽い挨拶を交わして、陸人は電車を降りて行った。

私はぼんやりと固い2枚の板が合わさるのを眺めながら、一息つく。


―――恋なんてしても、意味がないってずっと思ってきた。

お姉ちゃんの幼なじみ、まあつまり私の幼なじみでもある早瀬奏太。あいつのことがお姉ちゃんはずっと好きだったのに、あいつは自分への気持ちにまったく気が付かず、その間にお姉ちゃんは好きでいるのを止めてしまった。

近いけど近くないこの距離だから、お姉ちゃんのことがよく見えて。

辛い、苦しい。そんな気持ちに疲れてしまったんだ。


それから私は、“恋”とか“恋愛”についていい印象を持たなくなっていった。

いいことなんてないって。

ずっとそうだったのに。


ちょっと、ほんのちょっとだけ、してみようって思ってしまったのは、いったい誰のせいだと思ってるの。あのやろう。

< 126 / 150 >

この作品をシェア

pagetop